本気の恋の始め方
「ハタチだよ。見えない?」
缶ビールをごくごく飲みながら笑う彼。
きっと年についてはよく言われるんだろう。
そもそもハタチであの「赤と黒の蜘蛛」のマネージメントからプロデュースまで一人でやると言うんだから、そんじょそこらにいるハタチではないに決まっているのだけれど。
「ごめんなさい。なんていうか……私……音楽を聴いても、舞台を見ても、ただひたすら圧倒されるっていうか……自分がハタチのころを思い出すと、あぜんとしちゃうと言うか……」
「謝らなくてもいいけど。ねえ、楽しんでくれてる?」
端的に問いかけてくる御子柴律。
楽しいのか、楽しくないのか。
すごいとかそんな評価よりも、御子柴律はそんなことが気になるみたいだった。
「も、もちろん楽しんでるわ! 私、赤と黒の蜘蛛、大好きなの!」
ハッとしてコクコクとうなずいた。
「だったら嬉しいよ。ありがとう」
そして彼は飲み終えたビールの缶をテーブルの上に置く。