本気の恋の始め方
「千野君」
「はい」
彼はにこにこして私に近寄ると、壁を背にして立つ私を見下ろした。
「お水、取ってこようか?」
「酔ってませんよ」
酔ってないと言っても、きっと、酔ってる。間違いない。
「さっきのことだけど」
「はい」
「冗談だよね?」
「いえ、本気です」
千野君はまたにこっと笑って私を見下ろす。
「ま……まさかぁ……私と飲んでも、楽しくないよ」
へらっと笑ったら
「俺の本気、見せましょうか?」
長身の上半身を折り曲げるようにして、私の肩をつかみ軽々と引き寄せる。
あっと思った瞬間、彼の唇が私の唇をふさいでいた。