主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「父様、朔ちゃんがお勧めの本があったら貸してくださいって言ってたから、何か借りてもいいですか?」
「ああ、いいとも。どれ、持ってきてあげよう」
晴明が腰を上げて私室へ移動したのを微笑んで見送っていた息吹の態度に苛立ちを覚えた銀は、息吹の隣に移動して尻尾で手をくすぐった。
…まるで若葉の存在を忘れきったかのように振る舞うので、もう無視はできなくなっていた。
「息吹、俺に何か話があるんじゃないのか?そのためにここに来たんだろう?」
「え?私が銀さんに会いに?違うよ誤解しないで。主さまに怒られちゃう」
また空振りに遭い、どうしても若葉がどう過ごしているのかを聞き出したかった銀は、遂にその名を口にした。
「…若葉はどうしている?元気か?あいつまた風邪なんか引いてないだろうな」
「……あ、父様わざわざありがとう、こんなに貸してくれるの?」
戻ってきた晴明の手には10冊ほどの分厚い書物や巻物があり、息吹の関心がそちらに移ったのと、若葉のことをはぐらかす息吹の態度に違和感をぬぐえない銀は、思わず息吹の腕を強く掴んで声を上げさせた。
「ゃ、銀さん、痛いよ…っ」
「若葉はどうしている?何故はぐらかすんだ?あいつは元気なんだろうな?」
「銀よ、それ以上息吹を痛がらせるならば、私が相手をするが」
俄かに晴明が殺気立ち、はっとした銀が息吹の細い腕を離すと、右手首には真っ赤な痣ができていた。
後で絶対主さまに怒られるだろうな、と片や冷静でいながらも、銀は追及をやめなかった。
「教えてくれ。俺と離れて…若葉はどう思っているんだ?俺と離れていた方が…幸せそうか?」
濃紺の瞳が苦しそうな光を瞬かせる。
息吹はそんな銀をじっと見つめて、肩で大きく息をついた。
「…銀さん…若葉は今重たい病気にかかってるの。…誰にも治せない病気で、手がつけられないの。とても苦しんでて…私たちではどうしようもできないの。このままだと死……銀さん?」
「戻る。何故それを早く言わないんだ!今すぐ戻る!」
草履も履かずに外に飛び出した銀が風の如き速さで空を駆け、幽玄町へ向かった。
息吹は銀を見送りながら腕を擦り、くすくす笑っている晴明に笑いかけた。
「誰にも治せぬ病、か。言いえて妙だねえ、的を得ている」
「でしょ?恋の病気は誰にも治せないの。恋した相手にしかね」
銀の必死な表情をはじめて見た晴明と息吹は、また笑い合って団子を口に運んだ。
「ああ、いいとも。どれ、持ってきてあげよう」
晴明が腰を上げて私室へ移動したのを微笑んで見送っていた息吹の態度に苛立ちを覚えた銀は、息吹の隣に移動して尻尾で手をくすぐった。
…まるで若葉の存在を忘れきったかのように振る舞うので、もう無視はできなくなっていた。
「息吹、俺に何か話があるんじゃないのか?そのためにここに来たんだろう?」
「え?私が銀さんに会いに?違うよ誤解しないで。主さまに怒られちゃう」
また空振りに遭い、どうしても若葉がどう過ごしているのかを聞き出したかった銀は、遂にその名を口にした。
「…若葉はどうしている?元気か?あいつまた風邪なんか引いてないだろうな」
「……あ、父様わざわざありがとう、こんなに貸してくれるの?」
戻ってきた晴明の手には10冊ほどの分厚い書物や巻物があり、息吹の関心がそちらに移ったのと、若葉のことをはぐらかす息吹の態度に違和感をぬぐえない銀は、思わず息吹の腕を強く掴んで声を上げさせた。
「ゃ、銀さん、痛いよ…っ」
「若葉はどうしている?何故はぐらかすんだ?あいつは元気なんだろうな?」
「銀よ、それ以上息吹を痛がらせるならば、私が相手をするが」
俄かに晴明が殺気立ち、はっとした銀が息吹の細い腕を離すと、右手首には真っ赤な痣ができていた。
後で絶対主さまに怒られるだろうな、と片や冷静でいながらも、銀は追及をやめなかった。
「教えてくれ。俺と離れて…若葉はどう思っているんだ?俺と離れていた方が…幸せそうか?」
濃紺の瞳が苦しそうな光を瞬かせる。
息吹はそんな銀をじっと見つめて、肩で大きく息をついた。
「…銀さん…若葉は今重たい病気にかかってるの。…誰にも治せない病気で、手がつけられないの。とても苦しんでて…私たちではどうしようもできないの。このままだと死……銀さん?」
「戻る。何故それを早く言わないんだ!今すぐ戻る!」
草履も履かずに外に飛び出した銀が風の如き速さで空を駆け、幽玄町へ向かった。
息吹は銀を見送りながら腕を擦り、くすくす笑っている晴明に笑いかけた。
「誰にも治せぬ病、か。言いえて妙だねえ、的を得ている」
「でしょ?恋の病気は誰にも治せないの。恋した相手にしかね」
銀の必死な表情をはじめて見た晴明と息吹は、また笑い合って団子を口に運んだ。