主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
相変わらず部屋に籠ってまんじりと過ごしていた若葉は、手鏡に映る酷い顔色の自分自身にため息をついた。
銀がどうしているかともちろん気にはなっていたが、銀がこんな風に自分を気にしてくれているとはとても思えない。
ましてや女遊びばかりしているのだろうから、そんな銀のことを気にしていても馬鹿みたいだと思いつつも、銀の笑顔が目に浮かぶ。
「ぎんちゃん…何してるのかな…」
今はまだ日中。
百鬼は夕暮れになると百鬼夜行に出るために主さまの屋敷に集結するが…銀はあれから屋敷に顔を出さない。
もちろん自分と顔を合わせたくないのだと思っているし、間違ってはいないだろう。
若葉の銀に対する考え方はすべて否定的で、それでも捨てられていた自分をここまで育ててくれたことに感謝して、気にかけていた。
「朔ちゃんの部屋に行こうかな…。ひのえちゃんに会いに行こうかな…」
床から出られずに布団の中でもそもそしていると――ものすごい足音が聞こえて顔を上げた若葉は、部屋の前で立ち止まった足音に首を傾げた。
そして、香るはずのない香りを嗅いだ気がして、その名を呼ぶ。
「…ぎんちゃん…?」
「若葉、入るぞ!」
珍しく声を荒げて部屋へ入ってきた銀の姿を見た若葉は、銀の切羽詰まった表情を見てぽかんとしていた。
だが銀は、若葉は床に臥せているし、顔色は気味が悪いほどに白いし、気が気ではなくなって若葉の前で膝をつくと、肩で大きく息をして苦しそうにしながら瞳を覗き込んだ。
「なんの病だ?俺が必ず治してやる!どこが痛い?咳は出るか?薬湯を作ってきてやるから待っていろ!」
「ぎんちゃん…?私…病気じゃないよ?どこも悪くないよ?」
「嘘を言うな。その顔色は絶対どこか悪いはずだ。…すまなかった、今までお前を放っておいて…。身体を悪くするなんて…お前は女なのに…」
銀の耳は垂れ、切れ長の瞳は少し潤んでいるように見えた。
若葉の頬に手を伸ばしては手を引っ込めて、すぐさま身を翻すと台所に向かって戸棚を漁り、滋養のよさそうなものを探す。
だが今までほとんど台所に立ったことのない銀は何をどうすればいいのか途方に暮れて立ち竦んでいると、雪男が顔を出して青い瞳を瞬かせた。
「何してんだよ、息吹に怒られるぞ」
「薬湯を作りたい。弱った身体を回復させるようなものを作りたいんだ。作り方を教えてくれ」
頭の中は、一瞬で若葉のことでいっぱいになった。
銀がどうしているかともちろん気にはなっていたが、銀がこんな風に自分を気にしてくれているとはとても思えない。
ましてや女遊びばかりしているのだろうから、そんな銀のことを気にしていても馬鹿みたいだと思いつつも、銀の笑顔が目に浮かぶ。
「ぎんちゃん…何してるのかな…」
今はまだ日中。
百鬼は夕暮れになると百鬼夜行に出るために主さまの屋敷に集結するが…銀はあれから屋敷に顔を出さない。
もちろん自分と顔を合わせたくないのだと思っているし、間違ってはいないだろう。
若葉の銀に対する考え方はすべて否定的で、それでも捨てられていた自分をここまで育ててくれたことに感謝して、気にかけていた。
「朔ちゃんの部屋に行こうかな…。ひのえちゃんに会いに行こうかな…」
床から出られずに布団の中でもそもそしていると――ものすごい足音が聞こえて顔を上げた若葉は、部屋の前で立ち止まった足音に首を傾げた。
そして、香るはずのない香りを嗅いだ気がして、その名を呼ぶ。
「…ぎんちゃん…?」
「若葉、入るぞ!」
珍しく声を荒げて部屋へ入ってきた銀の姿を見た若葉は、銀の切羽詰まった表情を見てぽかんとしていた。
だが銀は、若葉は床に臥せているし、顔色は気味が悪いほどに白いし、気が気ではなくなって若葉の前で膝をつくと、肩で大きく息をして苦しそうにしながら瞳を覗き込んだ。
「なんの病だ?俺が必ず治してやる!どこが痛い?咳は出るか?薬湯を作ってきてやるから待っていろ!」
「ぎんちゃん…?私…病気じゃないよ?どこも悪くないよ?」
「嘘を言うな。その顔色は絶対どこか悪いはずだ。…すまなかった、今までお前を放っておいて…。身体を悪くするなんて…お前は女なのに…」
銀の耳は垂れ、切れ長の瞳は少し潤んでいるように見えた。
若葉の頬に手を伸ばしては手を引っ込めて、すぐさま身を翻すと台所に向かって戸棚を漁り、滋養のよさそうなものを探す。
だが今までほとんど台所に立ったことのない銀は何をどうすればいいのか途方に暮れて立ち竦んでいると、雪男が顔を出して青い瞳を瞬かせた。
「何してんだよ、息吹に怒られるぞ」
「薬湯を作りたい。弱った身体を回復させるようなものを作りたいんだ。作り方を教えてくれ」
頭の中は、一瞬で若葉のことでいっぱいになった。