主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
若葉は病気ではないことを知っている雪男だったが…なんだか面白そうな展開になってきたので、敢えてそこは伏せておいた。
また息吹もあまり身体が丈夫ではないので、晴明が作ってくれた滋養強壮の粉薬が戸棚にあることを知っていたし、現に若葉の顔色が悪いことを知っていたので、戸棚の中から薬を取り出して銀に手渡す。
「ほい、これ。銀…お前今まで一体何してたんだ?」
「…逃げていたんだ。だが…逃げ切れなかった」
雪男はもうすっかり元の大きさに戻っていたのだが、銀はしばらくの間雪男が童子のように小さかった時によくしていたように、青い髪をくしゃくしゃとかき混ぜて雪男を怒らせながらも、白湯を湯呑に注いで急ぎ足で若葉の元に向かう。
その頃には床に臥せていた若葉は起き上がっていたのでほっとしつつも、枕元に湯呑と薬を置いた銀は、若葉の肩に羽織をかけてやりながら――香る“女”の匂いにもう誤魔化しが利かなくなっていた。
「これを飲め。ものすごく苦いらしいから饅頭も持ってきてやった。さあ、俺の前で飲め」
「ぎんちゃん…だから私は病気じゃないって言ったでしょ?」
「いいから飲め。さあ、早く」
頑として目の前で薬を飲ませようとする銀の顔が駄々をこねる子供のような表情を浮かべていたので、仕方なく最高に苦い粉薬を口に含んで白湯で流し込んだ若葉は、すぐさま饅頭を食べて後味を消すと、顔をしかめた。
「これ苦い…。ぎんちゃん…もう1度言うけど、私は病気じゃないよ?勘違いしてるの?」
「いや、確かに息吹からお前が苦しそうにしていると聞いた。“私たちには治せない”とも言っていた。…不治の病なのか?どうすれば治る?胸が苦しいんだろう?」
「そう言われると…胸は苦しかったけど…病気じゃないよ。それより…ぎんちゃんの馬鹿、家出なんかして…困らせないで。帰って来たら絶対怒るんだって決めてたんだから」
少し頬を膨らませた若葉の顔色はほんの少しだが良くなり、またほっとした銀は、無意識のまま――若葉を腕に抱き寄せた。
…首筋からはほんのり女の香りがして、もういつでも嫁に出してもいいのだと思ったが…まだ手放せない。
あれからずっと、腕には若葉の感触が残っていて、取れることはなかった。
そして今もまた、同じことを繰り返そうとしている。
「心配させるな…」
何度も耳元で囁く銀の低い声が心地よく、若葉もまた無意識のままに、銀の背中に腕を回して抱き着いた。
また息吹もあまり身体が丈夫ではないので、晴明が作ってくれた滋養強壮の粉薬が戸棚にあることを知っていたし、現に若葉の顔色が悪いことを知っていたので、戸棚の中から薬を取り出して銀に手渡す。
「ほい、これ。銀…お前今まで一体何してたんだ?」
「…逃げていたんだ。だが…逃げ切れなかった」
雪男はもうすっかり元の大きさに戻っていたのだが、銀はしばらくの間雪男が童子のように小さかった時によくしていたように、青い髪をくしゃくしゃとかき混ぜて雪男を怒らせながらも、白湯を湯呑に注いで急ぎ足で若葉の元に向かう。
その頃には床に臥せていた若葉は起き上がっていたのでほっとしつつも、枕元に湯呑と薬を置いた銀は、若葉の肩に羽織をかけてやりながら――香る“女”の匂いにもう誤魔化しが利かなくなっていた。
「これを飲め。ものすごく苦いらしいから饅頭も持ってきてやった。さあ、俺の前で飲め」
「ぎんちゃん…だから私は病気じゃないって言ったでしょ?」
「いいから飲め。さあ、早く」
頑として目の前で薬を飲ませようとする銀の顔が駄々をこねる子供のような表情を浮かべていたので、仕方なく最高に苦い粉薬を口に含んで白湯で流し込んだ若葉は、すぐさま饅頭を食べて後味を消すと、顔をしかめた。
「これ苦い…。ぎんちゃん…もう1度言うけど、私は病気じゃないよ?勘違いしてるの?」
「いや、確かに息吹からお前が苦しそうにしていると聞いた。“私たちには治せない”とも言っていた。…不治の病なのか?どうすれば治る?胸が苦しいんだろう?」
「そう言われると…胸は苦しかったけど…病気じゃないよ。それより…ぎんちゃんの馬鹿、家出なんかして…困らせないで。帰って来たら絶対怒るんだって決めてたんだから」
少し頬を膨らませた若葉の顔色はほんの少しだが良くなり、またほっとした銀は、無意識のまま――若葉を腕に抱き寄せた。
…首筋からはほんのり女の香りがして、もういつでも嫁に出してもいいのだと思ったが…まだ手放せない。
あれからずっと、腕には若葉の感触が残っていて、取れることはなかった。
そして今もまた、同じことを繰り返そうとしている。
「心配させるな…」
何度も耳元で囁く銀の低い声が心地よく、若葉もまた無意識のままに、銀の背中に腕を回して抱き着いた。