主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
久々に若葉の手料理を食べた銀は、忙しなく洗い物や洗濯物をしている若葉を手伝うために、洗濯物を取り込んだり、風呂を沸かしたりして一緒に動き回っていた。

若葉が動く度にいい香りがして、それが女の匂いだともう気付いている銀は、若葉に触れたくて仕方がなくなっていた。

…まさか赤子の頃から育てていた女に惑わされるとは夢にも思わず、また主さまもこんな風に悶々とした日々を送っていたのかと思うと、尊敬してしまう。


「若葉、風呂が沸いたぞ。今なら湯が熱いから早く入れ。なんなら俺も一緒に入ろうかな」


後半は冗談であることをわかってもらうために笑い声を上げながら言ったのだが――

若葉は洗濯物を畳みながらこくんと頷いて、凍り付いた銀を見上げた。


「いいよ、ちょっと狭いけど身体擦ってあげる」


「…はあ?じょ…冗談だったんだが…いいのか?」


「え?冗談だったの?私はどっちでもいいよ、じゃあ先に入ってるね」


――完全に固まってしまった銀は、意思とは裏腹に尻尾が爆発せんばかりにいつもより激しくぴょこぴょこと動いてしまって己の尻尾を掴んで諌めると、若葉を追いかけて風呂場に向かう。

ここ数年はなんとなく一緒に風呂に入れないでいたが…動揺しまくりながら風呂場の戸を開けると――若葉はすでに裸になっていて、桶で湯を掬って肩にかけていた。


…瑞々しく細く美しい身体。

肉感的ではないが、まだ未完成な身体は銀をときめかせて眩暈を起こさせてよろめくと、若葉はその間に浴槽に浸かりながら銀を見上げた。


「ぎんちゃん入らないの?」


「…お前…俺と一緒に入るのが嫌だったんじゃないのか?」


「そんなこと私言った?ぎんちゃんがいつも居ないから1人で入ってただけだよ」


若葉は恥ずかしがっていないのに、自分がこうもまごついて恥ずかしがっているのはおかしなことだし男らしくないと考えた銀は、勇気を出して帯を外して着物を脱いだ。

その間若葉はじっと銀を見ていたが――最終的にはふいっと目を逸らして背を向けると、膝を抱えて首まで浸かった。


「さすがに狭いな。ちょっと避けろ」


「これが限界なの。ぎんちゃんも膝曲げないと一緒に入れないよ」


「じゃあ俺の膝に乗れ。さあ、ほら」


素肌の若葉の腰に触れた銀の手がかじかむ。

眩暈もさらに激しくなり、息が上がりそうになるのを堪えながら、若葉を抱き寄せた。
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