主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
途方に暮れた銀が主さまの屋敷に戻ると、息吹が白無垢の衣装を手に主さまと何か話をしていた。
「若葉は私とあまり体形が変わらないから、仕立て屋さんに出さなくても大丈夫だと思うの。主さま…私が届けに行ってもいいと思う?」
「お前なら大丈夫だろう。…とうとう嫁に行くのか。まるで娘を手放した気分だな」
今までほとんど若葉に干渉しなかった主さまだったが、それでも共に過ごした時間は長く、娘のように思っていたのは事実だ。
息吹が“いつか娘が嫁ぐ時に”と大切にしまっていた白無垢を若葉に贈ると言った時も反対しなかったのは、そういう理由だからということもある。
「参列…も無理だよね。でも…若葉が幸せになってくれるのなら応援しなきゃ。朔ちゃん…寂しくなるね」
「…これでいいんだと思います。丙なら若葉を大切にしてくれると思うから」
――銀は歯ぎしりをしてわざと足音を立てて主さまたちの前に姿を現した。
すでに気配に気付いていた主さまと朔は驚かなかったが、息吹は久々に屋敷に姿を現した銀を見て、儚げに微笑んだ。
「銀さんも一緒に遠くから見に行こうよ。花嫁姿…きっととても綺麗だと思うよ。娘みたいに大切に思っていたのなら、見守ってあげなきゃ」
「……」
息吹なりに皮肉を込めた一言に、銀は少し唇を尖らせてそっぽを向いて縁側に腰掛けた。
「…お前の言う通りだ。もう若葉は俺の元には戻って来ない。夫婦になって子が生まれて…若葉が寿命で死んだら、骨は引き取りに行く。…俺の傍に置く」
「銀さん…」
「人が早死にすることくらい俺だって知っている。俺は過ちを犯して若葉を手放してしまったが…いつでも見守っている。いつでもずっと」
銀の若葉に対する愛を見た息吹は、今すぐ若葉の元へ行って今の言葉を伝えたかったが――これ以上2人の仲をこじらせたくはない。
後はもう、流れに任せるがままに。
「これで自然な状態に戻った。俺たちは若葉が頼ってこない限り一切干渉せずに暮らしていく。百鬼にもそう伝えておく。朔や銀もそう心に留めておけ」
「はい、お父様」
「…わかった。だが花嫁姿は息吹と見に行く。遠巻きにな」
幸せになってくれるのなら…それでいい。
愛しい者と別れる決意をした。
「若葉は私とあまり体形が変わらないから、仕立て屋さんに出さなくても大丈夫だと思うの。主さま…私が届けに行ってもいいと思う?」
「お前なら大丈夫だろう。…とうとう嫁に行くのか。まるで娘を手放した気分だな」
今までほとんど若葉に干渉しなかった主さまだったが、それでも共に過ごした時間は長く、娘のように思っていたのは事実だ。
息吹が“いつか娘が嫁ぐ時に”と大切にしまっていた白無垢を若葉に贈ると言った時も反対しなかったのは、そういう理由だからということもある。
「参列…も無理だよね。でも…若葉が幸せになってくれるのなら応援しなきゃ。朔ちゃん…寂しくなるね」
「…これでいいんだと思います。丙なら若葉を大切にしてくれると思うから」
――銀は歯ぎしりをしてわざと足音を立てて主さまたちの前に姿を現した。
すでに気配に気付いていた主さまと朔は驚かなかったが、息吹は久々に屋敷に姿を現した銀を見て、儚げに微笑んだ。
「銀さんも一緒に遠くから見に行こうよ。花嫁姿…きっととても綺麗だと思うよ。娘みたいに大切に思っていたのなら、見守ってあげなきゃ」
「……」
息吹なりに皮肉を込めた一言に、銀は少し唇を尖らせてそっぽを向いて縁側に腰掛けた。
「…お前の言う通りだ。もう若葉は俺の元には戻って来ない。夫婦になって子が生まれて…若葉が寿命で死んだら、骨は引き取りに行く。…俺の傍に置く」
「銀さん…」
「人が早死にすることくらい俺だって知っている。俺は過ちを犯して若葉を手放してしまったが…いつでも見守っている。いつでもずっと」
銀の若葉に対する愛を見た息吹は、今すぐ若葉の元へ行って今の言葉を伝えたかったが――これ以上2人の仲をこじらせたくはない。
後はもう、流れに任せるがままに。
「これで自然な状態に戻った。俺たちは若葉が頼ってこない限り一切干渉せずに暮らしていく。百鬼にもそう伝えておく。朔や銀もそう心に留めておけ」
「はい、お父様」
「…わかった。だが花嫁姿は息吹と見に行く。遠巻きにな」
幸せになってくれるのなら…それでいい。
愛しい者と別れる決意をした。