主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
それからの数日間、銀は黙々と百鬼夜行をこなした。
だが暴れる妖を見つけた時は誰よりも早く駆けて行って力を振るい、気持ちのやりきれなさをそれで晴らそうとしていたのは如実だった。
主さまは特に諌めもせずに銀とかつて大きな戦いをした時に見せていた無表情に戻ってしまった銀を憐み、無言でその肩を抱く。
「なんだ気持ち悪い。手を離せ」
「…今から晴明の所へ行く。お前も付き合え。久々に酒でも飲もう」
「…俺を憐れんでいるんだな?傷の舐め合いでもするつもりか?ひとつ間違えばお前が今の俺のようなことになるかもしれなかったんだからな、見るに堪えないんだろう?」
「銀」
強い口調で名を呼ばれて思わず背筋が伸びると、主さまは銀の尻尾ときゅっとつねって後頭部を叩いた。
「あまり自分自身を責め立てるな。以前お前は言っただろう?“若葉が死んで骨になったら引き取る”と。待っていれば一緒になる日が来る。…そんなに長い時ではない」
「人は呆気なく死んでいく。そんな呆気ない時間をも見守ってやれないなんて…俺は馬鹿なんだ。もっと…正直になればよかった」
主さまが話を聞いてくれたことで、ぽろぽろと本音が出てしまった銀は、胸を詰まらせて俯いた。
離れて行ってしまったと思うとどうしようもなくせつなくなって、どんなに大切だったかを思い知らされる。
だが若葉は丙の手を選んだのだから、どうあっても幸せになってもらわなければならない。
「今日は自棄酒だ。俺が酔って記憶が無くなって滅茶苦茶になるまで付き合ってもらう。話も聞いてもらう。お前や晴明を困らせてやる」
「お前に困らせられるのは今に始まったことじゃない。俺だってお前に言いたいことが山ほどある。かつては当時の百鬼を大勢殺されてお前を恨んだものだ」
言い合いをしながら晴明の屋敷の庭に降りると、来訪を知っていたのか晴明は腰に手をあてて庭に立っていた。
明らかに呆れた顔をしていたが、縁側にはすでに酒宴の用意が整っている。
「そろそろ来るのではないかと思っていた。銀よ、私の愛娘を泣かせた話をしてもらおうか」
「それはもう終わった話じゃないか。息吹には許してもらって…」
「私は許していない。あの子が泣くほどのことなのだ、最初から最後まで全て吐き出してもらう故、大量の酒を用意しておいたぞ」
主さまと銀は肝を冷やしながら背を丸めて縁側に座った。
だが暴れる妖を見つけた時は誰よりも早く駆けて行って力を振るい、気持ちのやりきれなさをそれで晴らそうとしていたのは如実だった。
主さまは特に諌めもせずに銀とかつて大きな戦いをした時に見せていた無表情に戻ってしまった銀を憐み、無言でその肩を抱く。
「なんだ気持ち悪い。手を離せ」
「…今から晴明の所へ行く。お前も付き合え。久々に酒でも飲もう」
「…俺を憐れんでいるんだな?傷の舐め合いでもするつもりか?ひとつ間違えばお前が今の俺のようなことになるかもしれなかったんだからな、見るに堪えないんだろう?」
「銀」
強い口調で名を呼ばれて思わず背筋が伸びると、主さまは銀の尻尾ときゅっとつねって後頭部を叩いた。
「あまり自分自身を責め立てるな。以前お前は言っただろう?“若葉が死んで骨になったら引き取る”と。待っていれば一緒になる日が来る。…そんなに長い時ではない」
「人は呆気なく死んでいく。そんな呆気ない時間をも見守ってやれないなんて…俺は馬鹿なんだ。もっと…正直になればよかった」
主さまが話を聞いてくれたことで、ぽろぽろと本音が出てしまった銀は、胸を詰まらせて俯いた。
離れて行ってしまったと思うとどうしようもなくせつなくなって、どんなに大切だったかを思い知らされる。
だが若葉は丙の手を選んだのだから、どうあっても幸せになってもらわなければならない。
「今日は自棄酒だ。俺が酔って記憶が無くなって滅茶苦茶になるまで付き合ってもらう。話も聞いてもらう。お前や晴明を困らせてやる」
「お前に困らせられるのは今に始まったことじゃない。俺だってお前に言いたいことが山ほどある。かつては当時の百鬼を大勢殺されてお前を恨んだものだ」
言い合いをしながら晴明の屋敷の庭に降りると、来訪を知っていたのか晴明は腰に手をあてて庭に立っていた。
明らかに呆れた顔をしていたが、縁側にはすでに酒宴の用意が整っている。
「そろそろ来るのではないかと思っていた。銀よ、私の愛娘を泣かせた話をしてもらおうか」
「それはもう終わった話じゃないか。息吹には許してもらって…」
「私は許していない。あの子が泣くほどのことなのだ、最初から最後まで全て吐き出してもらう故、大量の酒を用意しておいたぞ」
主さまと銀は肝を冷やしながら背を丸めて縁側に座った。