主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
銀はすぐに酔い潰れた。

普段は酒に強く、酔うことはほとんどないのだが、晴明と主さまが話を聞いてくれたので、今までため込んでいた思いを全て吐き出して、楽になった。


「よく寝ている。銀がこんな醜態を晒したのははじめて見たぞ」


「俺もだ。晴明…銀は今後どうなる?」


「私に先読みの見は無い故わかりかねるが…このままの方がよい気がする。もし誤解を解いて共に夫婦になった場合…十六夜…そなたが抱えていた悩みを抱えることになる」


「…失った時にどうなるか、だな」


今が幸せだったとしても寿命が違う者同士が夫婦になった場合、運命は簡単に2人をいずれ引き裂く。

深く愛すれが愛するほどに失った時の喪失感は果てしなく、主さまは息吹が人の寿命で死ぬはずだった時にこの悩みを抱えていた。


銀もいずれ…同じ悩みに蝕まれてしまうのだ。


「だが銀が若葉を望むのであれば、乗り越えるべきだ。…俺は乗り越えようと誓った。夫婦になることは適わないということか?」


「そっとしておいてやった方が賢明だな。時が解決してくれることもある。私たちはこれ以上干渉せずに、銀が思いを打ち明けた時に聞いてやればよい。どうだこの寝顔…安らかではないか」


縁側にごろりと寝転がって熟睡している銀の尻尾はだらりと下がったままだ。

完全に熟睡していることが窺えるが、目じりには…涙が浮かんでいるように見えた。


主さまは無言で盃を呷ると、涼しい顔をして同じように盃を傾けている晴明を睨んだ。


「…次は俺に説教しようとしているな?」


「説教などせぬ。そなたが私の孫に跡目を継いで隠居するのはいつか、と問いたいだけだ。いつまで息吹に寂しい思いをさせるつもりなのだ?」


やっぱり説教じゃないか、と思いながらもそれを口に出さなかった主さまは、銀に薄い掛け布団をかけてやりながら、鼻を鳴らした。


「あれにはまだ至らない点が多い。最近は俺の親父が時々ちょっかいをかけに来る。まだ目が離せない状態だ」


「ほう、潭月殿が?朔にちょっかいを、ではなく、そなたにちょっかいをかけに来ているのでは?」


小賢しい親父なんだ、とぼやいた主さまが寝返りを打った銀の頭をぽんぽんと軽く叩くと、また安らかな寝息が聞こえた。


主さまも、若葉の嫁入りの姿を見に行くつもりだった。

銀の肩を抱きながら――
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