主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
銀の女遊びはぴたりと止んだ。

元々からして軽薄な部分はあったのだが、今はそれが嘘のようになりを潜め、黙々と百鬼夜行に努めている。


だが…戻る家は、あの小さな家。


息吹はそんな銀を心配して、料理を作って足繁く小さな家に通い、主さまを不機嫌にさせていた。


「お父様、お母様はまた銀のところですか?」


「…銀に構うなと言っているが、聞かない。俺たちに食い物など必要ないと言っているのに」


「…若葉はなるべく銀と一緒に食事をしたがっていました。お母様もそうじゃないですか。お父様も付き合っているじゃないですか」


「…」


何故か朔にやり込められて煙管を噛んだ主さまは、しばらくしてから戻って来た息吹を呼び寄せて説教を始めた。


「もう行くなと言っているのに何故銀のところへ行くんだ。あれから何か月経ったと思っている」


「何か月経ったって会いに行きます。銀さん絶対寂しいはずだから。主さま想像してみて。私が急に居なくなったらどう思う?居場所は知ってるのに会いに行っちゃいけないの。主さまならどうする?」


「…」


今度は息吹にやり込められてぐっと押し黙ると、小さな子供たちと一緒に廊下を走って遊んでやっていた雪男が息吹の姿を見て立ち止まり、馴れ馴れしく息吹の頭を撫でた。


「お帰り。銀はどうだった?」


「笑ってたけど、笑ってなかった感じ。私じゃ役不足なのかな…」


「そんなことないって。お前が会いに行ってるからなんとか平静でいられるんだ。偉い偉い」


元の姿に戻った雪男はまた少し大人っぽくなって色気が増し、息吹の頭を何度も撫でる。

いらいらの頂点に達した主さまは雪男に煙管を投げつけて威嚇すると、嬉しそうに笑っていた息吹の手を取って夫婦の部屋に引きずり込んだ。


「主さま?手が痛いよ」


「…様子を見に行け。丙とうまくいっているのか確認して来い」


「行っていいのかな…うまくいってるから何も言ってこないんじゃないの?私だって会いに行きたいけど…拒絶されるのが怖いから…」


正座をして俯いた息吹の手を握った主さまは、伏し目がちな息吹の顎を取って上向かせると、小さく笑った。


「お前のお節介は今に始まったことじゃない。明日行って来い。…銀には言うな」


「はい。若葉と丙…うまくいってたらいいね」


そう願うことしかできないことに歯がゆさを感じながらも、主さまに身体を寄せて腕に寄りかかった息吹は瞳を閉じた。
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