主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「若葉ちゃん、お客様がいらしてるわよ」
「え?…はい」
幽玄町に知り合いなど息吹たち以外居るはずがなく、玄関に向かった若葉は、風呂敷を手に佇む息吹の姿を見て、自然と笑顔が浮かんだ。
丙と夫婦になってから半年――それまで一向に連絡がなく、また連絡を取ろうともしていなかった若葉は、少し後ろめたい気分になって玄関先で正座をして頭を下げた。
「お姉ちゃん…お久しぶりです。お手紙書こうと思ったんだけど…」
「ううん、いいの。元々一切連絡を絶とうとしてたのに私が勝手に押しかけてるだけだから。ね、手作りのお饅頭作って来たの。一緒に食べよ?」
「お姉ちゃんの手作りのお饅頭?食べたい。お姉ちゃん、上がってっ」
久々にはしゃいだ声を上げて息吹の手を引っ張って引きずり込もうとする若葉の姿は今まで見たことがないほどに強引で、何事かと様子を見に来た丙は息吹の姿を見て表情を曇らせた。
「息吹様…」
「新婚生活のお邪魔をしちゃってごめんね。若葉とちょっとお話をしてもいい?」
「あ、はい…俺の許可は別に必要ないので…」
息吹が草履を脱いで家に上がると、遠慮をした丙は逆に草履を履いて外に出た。
すると玄関先には猫又が座り、胡乱な表情で丙を見上げると、大あくびをして地面に顎をつけて寝てしまった。
もちろん息吹を独りで歩かせるつもりのない主さまが猫又を護衛につけていたのだが、丙は息吹が銀の話をして惑わせるのではないかと気になってしまい、庭側に回り込んで聞き耳を立ててしまった。
「わあ、お饅頭美味しい。お姉ちゃん、私が煎った茶を飲んで」
「うん、ありがとう。元気そうで良かった。朔ちゃんも何も言わないけど心配してたみたいだから今日来てよかった」
にこっと笑った息吹は相変わらず可愛らしくて美しく、もじもじしつつもそっと息吹に近付いて隣に座った若葉は、やや頬を赤らめて手を握った。
「会いに来てくれてありがとう。あの…もしかして…何かあったの?その…」
「…何のこと?私は単純に若葉に会いに来ただけだよ。何か気になることでもあるの?」
――銀のことを聞きたい。
独りでどう暮らしているのか。
また女遊びを繰り返して、自分が離れたのをいいことに家に帰らない生活をしているのか。
問い質したいが、自ら銀から離れた以上、銀を心配するのもおかしなことに気付いている若葉は、すんと鼻を鳴らして息吹から香る“何か”の匂いを嗅ぎ取った。
「お姉ちゃん…ぎんちゃんの匂いがする」
懐かしい匂い。
銀の肩に寄りかかったつもりで、息吹の肩にもたれかかると、とうとう銀の現状を問うた。
「え?…はい」
幽玄町に知り合いなど息吹たち以外居るはずがなく、玄関に向かった若葉は、風呂敷を手に佇む息吹の姿を見て、自然と笑顔が浮かんだ。
丙と夫婦になってから半年――それまで一向に連絡がなく、また連絡を取ろうともしていなかった若葉は、少し後ろめたい気分になって玄関先で正座をして頭を下げた。
「お姉ちゃん…お久しぶりです。お手紙書こうと思ったんだけど…」
「ううん、いいの。元々一切連絡を絶とうとしてたのに私が勝手に押しかけてるだけだから。ね、手作りのお饅頭作って来たの。一緒に食べよ?」
「お姉ちゃんの手作りのお饅頭?食べたい。お姉ちゃん、上がってっ」
久々にはしゃいだ声を上げて息吹の手を引っ張って引きずり込もうとする若葉の姿は今まで見たことがないほどに強引で、何事かと様子を見に来た丙は息吹の姿を見て表情を曇らせた。
「息吹様…」
「新婚生活のお邪魔をしちゃってごめんね。若葉とちょっとお話をしてもいい?」
「あ、はい…俺の許可は別に必要ないので…」
息吹が草履を脱いで家に上がると、遠慮をした丙は逆に草履を履いて外に出た。
すると玄関先には猫又が座り、胡乱な表情で丙を見上げると、大あくびをして地面に顎をつけて寝てしまった。
もちろん息吹を独りで歩かせるつもりのない主さまが猫又を護衛につけていたのだが、丙は息吹が銀の話をして惑わせるのではないかと気になってしまい、庭側に回り込んで聞き耳を立ててしまった。
「わあ、お饅頭美味しい。お姉ちゃん、私が煎った茶を飲んで」
「うん、ありがとう。元気そうで良かった。朔ちゃんも何も言わないけど心配してたみたいだから今日来てよかった」
にこっと笑った息吹は相変わらず可愛らしくて美しく、もじもじしつつもそっと息吹に近付いて隣に座った若葉は、やや頬を赤らめて手を握った。
「会いに来てくれてありがとう。あの…もしかして…何かあったの?その…」
「…何のこと?私は単純に若葉に会いに来ただけだよ。何か気になることでもあるの?」
――銀のことを聞きたい。
独りでどう暮らしているのか。
また女遊びを繰り返して、自分が離れたのをいいことに家に帰らない生活をしているのか。
問い質したいが、自ら銀から離れた以上、銀を心配するのもおかしなことに気付いている若葉は、すんと鼻を鳴らして息吹から香る“何か”の匂いを嗅ぎ取った。
「お姉ちゃん…ぎんちゃんの匂いがする」
懐かしい匂い。
銀の肩に寄りかかったつもりで、息吹の肩にもたれかかると、とうとう銀の現状を問うた。