偏食家のテーブル
「いいよ。わかった、わかった。ウチに来い。」
ヒガシが言った。
「でも…」
「ワルモンはヤだから、しょうがねぇ。」
こうして、ユタカはハルカのおかげでボロアパートから脱出した。

これまでもヒマならヒガシのトコロで遊んでいたので、あまり変わりはなかったが、ヒガシが一緒に住むにあたって出したルールだけがこれまでとは違いを生み出した。
ひとつ、掃除をするコト。
ひとつ、メシをヒガシの分も用意するコト。
そして、一番のルールが、オンナを連れ込まないコト。
…他にもいろいろあったがヒガシが念をおしていたのはその三点だった。しかし、それを守るだけで家賃も何もいらないというのは、ヒガシの兄貴的太っ腹のおかげであった。

引っ越しと言っても持っていく物がほとんどなかった。貧乏フリーターの家具は一部を残し処分された。正方形の冷蔵庫も、以前努めた会社の休憩室にあったテレビも。ユタカが持っていったのは自分の服とCDくらいだった。
そして、男が二人の生活が始まった。

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