偏食家のテーブル

九年前、夏 2

ユタカの家を襲った猛暑は、カナの家にも現われていた。カナの家にもエアコンがなく、彼女も生存を守るために意識を強く持たねばならなかった。
風を取り込もうと窓を開ける。が、入ってくるのは熱風。しかし、開けないワケにはいかない。
「ナンだっての…」
思わず出てしまう。しかし、地球の警告なのだから仕方ない。カナは今、読んでいた本の内容を体感していた。その名もズバリ『地球の警告』という本だ。
カナはエコロジストでもジャーナリストでもない。しかし、こんなお堅い本を読んでいるのは来年の就職のためだ。カナがミスキャンパスに選ばれた事で、カナはいろいろなテレビ局から、花の女子アナウンサーとして誘いを受けていた。ウワサでは聞いていたのだが、本当にあるとは思っていなかった。
カナはなれるものならなりたいとは思っていたが、正直そこまでの固執はなかった。しかし、その局の人事部の担当は「なりたいんでしょ、そのためにミスキャンパスになったんでしょ」ぐらいの上から目線をカナにむけていたので、カナも勢いに負け、ナゼだか「ハイ。ガンバリます!」と意気込んでしまった。そして、渡された『地球の警告』。
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