偏食家のテーブル
その本によると、地球は危ないらしい。温暖化とか、資源の枯渇とか、生態系の異常とか書いてあった。が、この一女子大生にはあまりにもテーマが大きかった。志が高ければ、ナニか胸に響くのであろうが…いかんせんカナにはその志はなかった。そもそもナゼ女子アナに『地球の警告』なのか?人事部の考えもわからないではないが、カナにはまだ早いようだった。
「あ〜、暑い」
左手をウチワがわりにパタパタして、また一口ビールを飲む。昼から。そしてまたキャミソールのしみとなるべく、体から汗として流れる。
「もうダメっ!」
カナは立ち上がる。その暑さは『地球の警告』との決別を決心させた。シャワーを浴び、簡単な化粧をして外に出た。ドコか涼しい場所を求めて。アナウンサーを諦めるワケではないが、この部屋にいては人間を諦めかねない。
まず、大通りに出て自分が入れそうな店を探す。(カナは一人でレストランに入れない。)アスファルトの照り返しと、さっきまでのビールがカナの体力を奪う。着替えたハズのキャミソールが先程まで着ていた物のように感じる。化粧は簡単なものにして正解だった。ものの五分で素顔のカナになる。
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