偏食家のテーブル
大通りを歩くカナに一台のバイクが近づいた。カナは自分の生存で精一杯だったため、歩き続けていた。オアシスを求める砂漠の旅人のように。
「山本！」
カナは自分が『山本』だった事を思い出した。振り返り、バイクに乗るヘルメット姿の男を見る。
「田口クン！」
大通りでの偶然の出会いだった。
「ドコに行くの？」
ヘルメットを外しながら、ユタカは言った。
「あんまり暑いから、どこかで涼もうと思って。」
カナは自分の化粧が少し気になり、まともに目線も合わせず答えた。
「少し、付き合ってくれないかな？」
「えっ？！」
カナは勘違いをした。彼氏と彼女の付き合いを思ってしまった。そして、ユタカもカナの勘違いに気付いたらしく言い直した。
「あっ！…えーと、この後バイクの試運転で…その後ろに乗ってもらうワケにはいかないかなぁ…って。」
「あぁ、ウン。いいよ」
カナは顔を赤くしながら答えた。恥ずかしさのあまり、何も考えずに了承した。
そのバイクはヒガシの物であった。そして、それはついこの間までウンともスンともいわないガラクタでもあった。それを引っ張りださなければならなかったのは、ヒガシの新しい彼女のせいだった。
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表紙・目次

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