バイナリー・ハート 番外編
結局フェティの恋人は謎のまま、噂はいつしか下火になっていった。
「なんでそんなウソが噂になったの?」
「だって結婚させられそうになったんだもの。だから恋人がいますって断ったら噂になっちゃったのよ」
言いふらしたのは幹部局員のひとりらしい。
彼の知人を結婚相手としてどうかと紹介されそうになり、咄嗟についたウソだったという。
相手は上司だ。
そうでも言わなければ、断るのは困難だろう。
「そういう人ってどこにでもいるんだね。先生も王宮にいた頃、貴族のご婦人からやたらと結婚相手を紹介されてたらしいよ」
「放っといて欲しいわ。私は結婚よりやりたい事いっぱいあるのよ。そのうち気が向いたら結婚するわよ」
「えぇーっ? フェティって一生気が向きそうにない気がする」
「どういう意味よ。とにかく、そういう事だから安心して」