バイナリー・ハート 番外編


 ニッコリと笑うフェティを見て、ランシュは内心大きなため息をつく。
 それのどこが安心できるのだろう。

 フェティは気付いていないのだろうか。
 かえって歯止めがなくなってしまったという事に。

 ランシュは濡れた手を拭いて、フェティに歩み寄る。
 うっすらと笑みを浮かべて彼女の正面に立った。

 子どもの頃は見上げていたフェティの顔が、今は見下ろせる位置にある。
 これほど近くでフェティの顔を見るのは、大人になってからは初めてだった。

 澄んだブルーの瞳がまっすぐにランシュを見上げる。
 相変わらずフェティの生理反応は穏やかだった。


「フェティは安心しない方がいいよ」


 フェティのもたれた壁に両手をついて、腕の間に彼女を閉じ込める。

 微かにドーパミンが上昇。
 何? その好奇心。

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