あなたを抱けなかった理由
仕事は、とても難しかった。


17年ずっと一人で生きてきたと思っていたけれど、それは大きな勘違いでやっぱり私はあの親に守られていたんだと思った。

うん。少なくとも給料をもらうのがこんなに大変だということを知らなかったのだから。



毎日、大小様々な失敗を繰り返し社長に迷惑をかけっぱなしだったけど、それでも社長は私をクビにしなかった。

そして、いつでも「大丈夫、今度は気をつけてね」とだけ言った。



私は何の役にも立たず、ミスばかりをする自分の情けなさで、毎日会社にいるのがつらくなった。







そして、とうとう仕事に行けなくなった。





朝、家を出ようとしたら急に足が動かなくなった。

それから30分も玄関から動かない私をみて彼は「大丈夫」と背中をさすってくれた。
< 18 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop