あなたを抱けなかった理由
それからどの位の時間その場に立っていただろう。

体の緊張がほぐれて、なんとか一歩足が動くようになった私に、彼は「さあ、行こう。辞めるのも続けるのもちゃんと話した方がいい」と私の手を引き、会社へ向かって歩き出した。



会社へ着くと、社長が玄関の前で待っていた。「事故にでもあったのじゃないかと心配した」と。

そんな社長をみて、彼はゆっくりと私の背中を擦りながら「話をしておいで」と送り出してくれた。



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