あなたを抱けなかった理由
その日は予定よりずっと早く来た。


朝からあった鈍い痛みは、お昼頃には激痛になっていた。



社長の探してきた病院に到着する頃には、私の意識は朦朧としていて、何度も看護師に「しっかりしなさい」と頬を打たれた。









「6時25分男の子です」


ぐったりとする私に向けたその声は、どこか遠くに聞こえ、私の耳には元気な産声だけが響いていた。
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