花街妖恋
 女子に促され、男は再び横になった。
 そんな男を、女子はまじまじと見る。

 男は背が高く、少し全体的に色が黒い。
 長い髪をそのまま垂らしているので、身分ある人間には見えないが、見た目は涼やかだ。

「・・・・・・ここは花街だろう。男を入れても、よろしいのか」

 ぽつりと言った男に、女子は、はっと我に返り、ふふっと笑った。
 その笑みが、何とも言えない魅力を感じさせる。

「確かに花街ですけど、ここは置屋ですもの。ここにお客を上げるわけではありませんので、大丈夫ですよ。何より倒れているかたを、男だからとそのままにしておいては、それこそこの置屋の名折れです」

 一通り女子が説明したところで、襖が開き、遣り手であろう年かさの婆が入ってきた。

「お目覚めかえ」

 ちら、と男に視線を投げる。

「玉菊。そろそろ支度をおし。お前には今日も文が殺到してるんだから」

「はい」

 遣り手に言われ、女子は立ち上がりながら、男を見た。

「私は玉菊。この華龍楼の天神です。あなた様は?」

「・・・・・・九郎助」

 ぼそ、と答えた男に、にこりと笑いかけると、玉菊は立ち上がって部屋を出ていった。
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