花街妖恋
 九郎助は、次の日には置屋の中で働き出した。
 別にここで働きたいと言った訳ではないが、倒れていたところを助けて貰った恩はある。

 この華龍楼も、どうも男手がないらしい。
 薪割りや水汲みなど、力仕事に重宝された。

「まぁ九郎助様。そんなことして、大丈夫なんですか?」

 玉菊が、庭で薪を割っていた九郎助を見、縁側に駆け寄ってくる。

「大丈夫も何も。特に怪我はしておらぬ。多少力を使いすぎた故、気を失のうただけじゃ」

 ちら、と玉菊を見ただけで、黙々と薪を割る九郎助を、玉菊はじっと見つめる。

「不思議なかたですね」

 ぽつりと呟いた玉菊に、九郎助は少し首を傾げた。
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