雨夜の密会




「旦那さんを愛してるから悩んでる。もし愛してなかったら、そんな事では悩まないと思うよ?」


「……うん」



鳴海さんの言葉で私は下を向いた。


左手の薬指にある結婚指輪。


それをソッと撫でる。



「鳴海さん、私、帰るね……」


「うん」



鳴海さんは止めることなく、そう返事をして鯖トラの秋の頭を撫でた。


帰ることを止めてくれると少し期待していた自分がいた。


私は半分以上残したカレーとサラダの皿をキッチンに持って行き、カバンを持った。




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