雨夜の密会
ベンチに隣同士に座る。
「タバコ、吸っていい?」
「どうぞ?」
パーカーのポケットからタバコを取り出し、それを1本口に咥えて火をつける鳴海さん。
タバコの煙が上がっていく。
綺麗な指に挟まれたタバコ。
それを吸う鳴海さんの姿に胸が“ドクン”と高鳴った。
「今日さぁ、仕事が暇で。涼さんに帰っていいって言われたんだよね」
鳴海さんはそう言ってクスッと笑った。
まだお昼も来てないのに……。
「日曜日に仕事が暇って、叔父さんの写真館、大丈夫なのかなぁ?」
「さぁ?涼さん、半分趣味でやってるようなもんだから儲けとか考えてないのかもな」
「確かに」
私はそう言って力無く笑った。
叔父さん、うちのお父さんに昔よく怒られてたな。
“写真ばっか撮ってないで定職につけよ”
みたいに。
叔父さんがお父さんに怒られて、その度に不機嫌になるんだけど、小さかった私が頭撫でてあげたら笑顔になって。
写真撮ってくれて……。
懐かしいな。
「で、暇だからブラブラしてたら急に雨が降り出して、猫の事が気になってさぁ。スーパーで段ボールもらって、百均でタオル買って公園に来たら真緒ちゃんがいて……」
「うん……」
「何かあった?」
鳴海さんはそう言ってチラリと私を見た。