雨夜の密会
「えっ?」
私は鳴海さんを見た。
少し上を向いてタバコの煙を吐き出す。
「泣いてたでしょ?」
鳴海さんは再び私の方をチラリと見て口角を上げた。
その顔に背中が“ゾクリ”とする。
鳴海さんに言ったら楽になるのかな。
「旦那さんと何かあった?昨日のこと?」
「えっ?いや……」
「昨日のことは申し訳ないと思ってる」
私は首を左右に振る。
「でも、もし真緒ちゃんの涙の訳が夫婦の事で、何も話せないなら俺は何も聞かない」
鳴海さんはそう言って、短くなったタバコを携帯灰皿に押し付けた。
「あ、そうだ。真緒ちゃん?」
「ん?」
「俺さぁ、あの猫の親子を飼おうと思ってるんだ」
「えっ?」
「今から連れて帰ろうと思って」
「うん」
鳴海さんが見つけた猫の親子。
あそこにいるよりも室内の方がいいよね。
食べるものにも困らないし、天敵を気にしないで眠れるし。
「真緒ちゃん?」
「ん?」
「一緒に俺の家に来る?」