雨夜の密会
「お兄さん、名前は?」
葵ちゃんはベンチから立ち上がり、俺の前に立った。
「鳴海 蓮……」
「ふーん、いい名前だね」
「ありがとう……」
その時……。
「…………ううっ」
葵ちゃんが苦しそうな声を上げて、手で胸を押さえる。
膝から崩れ落ち“はぁはぁ”と苦しそうな息遣いを始めた。
「ちょっ!大丈夫か!?」
俺はカメラをベンチに置いて葵ちゃんの側に行き、背中を摩る。
「アハハハ」
えっ?
葵ちゃんを見ると笑ってる。
何が起こったのかわからない。
さっきまで苦しそうに胸を押さえていたのに笑ってる。
「なーんてね」
葵ちゃんはそう言ってクスッと笑うと、その場に大の字に寝転がった。