雨夜の密会
その願いはやって来た。
前に鳴海さんと会ってから1週間が経ったある日、朝からザーザー降りの雨。
無言で向かい合い朝食を食べているダイニングにも雨音が聞こえてくるくらいだった。
「行って来る」
和臣さんはそう言って、席を立つとビジネスカバンを持ち、リビングを出た。
私は和臣さんの後ろをついて玄関まで行く。
「和臣さん?傘……」
玄関に置いてあった傘を和臣さんに差し出した。
「うん……」
それを受け取る和臣さん。
“ありがとう”も言ってもらえない。
和臣さんはこちらを振り向く事なく、玄関を出て行ってしまった。