Realtime:kiss
奈津紀はこの後山中さんに会うと言うので、二時間程で店を後にした。



駅で二人と別れ、私は蒼佑に電話をした。


特に用がある訳ではなく、何となく声が聞きたくなったから……


でも、留守番電話になり、蒼佑とは話せなかった。


肩を落とし、ホームに滑り込んで来た電車に乗り込もうとした時、携帯が鳴った。


「はいっ!」


『なぁに張り切って出てんだよ。今平気か?』


蒼佑だった。


「うん、蒼佑君は今平気?」


『あぁ、で、何か用か?』


用がなきゃ、かけたらいけないのか、そんな言い方に少しムッとした。


「別に用は無いけど…
あっ、あのね?新家屋に引っ越したんだって?」


『…あぁ…』


どうでもいいような返事にまたムッとした。


「あっそう。
あたしとなんか話したくないみたいね。切るわ、じゃあね!」


『おいっ、待て、まだ切るな!』


電源に親指をやったけど、蒼佑のそんな声にまた携帯を耳に当てた。


『今どこ?家?』


「今から電車に乗るとこ」


『どこの駅?』


「会社の近くの……駅だけど?」


『15分で行く、改札で待ってろ』


そう言って携帯は切れた。



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