Realtime:kiss
蒼佑の家の近所のスーパーで適当に食材を物色し、車に戻った蒼佑の口元は、心なしか緩んで見えた。


何がそんなに楽しいんですか、と、問いかけずにはいられない程に……


走り出した車はあっという間に目的地に到着してしまった。


ほんとに私はここで、蒼佑との時間を過ごすの?


家の鍵を私に渡し、後部座席の私の鞄とスーパーの袋を持ち、早く開けろとせかされ、慌てて鍵を開けて中に入る。


蒼佑は真っ直ぐキッチンに入ると、テーブルの上に食材の入った袋を置き、その後、リビングに行き私の鞄を置き、上着をソファーの背もたれにかけ、自身もそこに腰を下ろした。


「はぁあ、奈緒、そんなとこに突っ立ってないで、こっち来て座れよ」


私は蒼佑に促され、しかし、蒼佑の隣には座らず、向かいに腰掛けた。


「なんでそっち?
俺はこっちっつったんだけど」


そしてネクタイを緩める。


そんな事言われてはい、そうですかといく訳がない。


「ねぇ、病院で言ってた事なんだけど……」


私は切り出した。


「あぁ、あん時ね、もお、すんげぇ緊張したし」


見当違いの答えが返ってくる。



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