雪風‐冷たくさらっていくもの‐
「偶然、見ちゃったの。五十部に告白してる子を」
僕は続きが容易に想像ができた。
五十部は優しい。誰にでもだ。そしてそれなりに顔もいい。
なんとなく好きになってしまう女子は少なくない。
「五十部、あっさりokしてた。その子と初対面っぽかったのによ」
木葉はうつむいた。
そして暗い声で続けた。
「そして、すぐに別れてた。五十部は、恋人よりも友達の約束を優先した。恋人よりも友達の窮地にかけつけた。恋人よりも友達の頼みを引き受けた。あまつさえ、友達が五十部の恋人のことを好きだって冗談で言ったとき、じゃあ別れるからって言うのよ」
普通ありえないことだが、健二は自分の恋人すら友達の順位に組み込むのだ。知り合ったばかりなら当然順位は低い。
ほとんどの友人が恋人よりも優先されてしまう。
健二は、順位をつけるが、友人と恋人を平等に扱うのだ。自分の決めた順位を冒さないという、残酷な平等性。
「あいつ、友達と恋人の区別ついてないのよ」
泣きそうに木葉は言った。
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