執事ちゃんの恋




「健先生。それは違うと思います」

「どういうことだい? ヒナタ」


 怪訝そうな表情を浮かべる健に、ヒナタは静かに淡々と話す。


「今までは健先生が思っていたように、彼女も同じ考えだったんじゃないかなと思います。ただ……」

「ただ?」

「突然状況が変わり始めたことに、焦りを感じたのは確かだと思いますけど」


 ヒナタは、健とそしてヒヨリの二人を見比べて小さく笑う。
 その笑みの意味がわかった健は、クスッと笑うとヒヨリを引き寄せた。


「た、た、健せんせ?」


 再び健の腕の中に閉じ込められたヒヨリは、真っ赤になって胸板を押す。
 が、どんなに力をこめたって男の力に敵うわけがない。
 それどころか、より強い力によって抱きしめられてしまいヒヨリはひとり慌てる。


「ちょ、ちょっと! 健せんせってば」

「フフッ。相変わらずヒヨリは可愛いですね」

「か、か、可愛い!!?」

「ドレス姿のヒヨリ。ステキでしたよ?」

「あ、ありがとうございま……す?」


 なぜか疑問系で首を傾げるヒヨリに、健とヒナタはおかしそうに笑うと、からかわれていると思ったのか、ヒヨリは口を尖らせた。


「二人してそんなふうにからかって遊ばなくたっていいじゃない!」


 ツンと健の腕の中でそっぽを向くヒヨリを見て、健はクスクスと笑った。




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