執事ちゃんの恋





「ヒヨリ」

「なんですか? もう、いいです!」


 すっかり拗ねてしまったヒヨリに、健は困ったように眉を下げた。


「話を聞いてくれませんか?」

「だから、もういいんですってば!」


 そっぽを向き、窓の外に顔を向けてしまったヒヨリ。

 健は彼女の背中に向って口を開いた。


「さきほどの話ですけど」

「……」


 だんまりをきめこんだヒヨリに、なんでもないとばかりに健は言葉を投げかけた。


「美紗子は、私の許婚でしたよ」

「え……?」


 やっと健のほうを向いたヒヨリに、健は含み笑いをする。

 驚くヒヨリに、淡々と健は話していく。





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