冬が、きた。
……うーん、………終わらない。
3時間ほど粘っているけど、終わりが遠い。
でも、これから年末にかけて、予定も詰まってるし。
今日これだけはやっとかないと、きつくなるのは分かっている。
「……よし、あとちょっとだ」
そう呟いた瞬間。
肩を、とんとんと遠慮がちに叩かれた。
ん?誰だ?
きょとんとしながら、くるりと振り向くと。
「………!?」
振り向いたそこにいたのは、野々山くんだった。
野々山くんは腰を曲げて、ひそひそ声で話しかけてきた。
「ごめん、忙しい所に。昨日のお礼が言いたくて。コンサート、見に来てくれて、ありがとう」
「えっ、いや、そんな!こちらこそ、楽しませてもらって、ありがとう……。私、本当に、感動しちゃった」
「本当に?ありがとう。じゃ、ごめんね、邪魔しちゃって。それじゃ、また……」
そう言って、野々山くんは図書館の出口の方へ歩いていった。