冬が、きた。
私は、その後ろ姿を、呆然として見つめた。
……野々山くん、肩に、雪が乗ってた……。
窓に目をやると、空はもう真っ暗で、しんしんと降る雪が見えた。
………もしかして、野々山くん、私にお礼を言うためだけに、わざわざ図書館まで………?
そう思い立った瞬間。
私は無言で、机に広げていた資料をバタバタとカバンに入れて、傘を握り、図書館を飛び出した。
レポートなんて、もう、どうにでもなれ!
図書館を出て、校門の方へ走ると、背の高い影が見えた。
「……野々山くん!」
「えっ、雪音、さん?」
「はい、これ!」
「……?」
私は傘を差し出した。
「雪が、あの、積もってたから……。傘、無いと思って。私、あの駅までだから、すごい近いし、これ貸してあげる!」
「雪音さん……」
野々山くんは、目を見開いて、私を見下ろした。
「………僕も、あの駅から、電車乗るよ」
「………そうでしたか」
私はがっくりとうなだれた。