冬が、きた。





「い、嫌なら、無理に言わなくても良いよ!私は嫌じゃないから、本当に!」


「………あの、名前が………」


「え?」


「名前が、素敵だなあ、って、思って………」


「えっ………」


今度は、私が赤くなる番だった。


「雪音さんの名前……。
雪の音、って、書くでしょう?
雪が降る時には音はしないのに。でも、雪音さんの名前をつけた人には、何か雪の音が聞こえたんだろうかって、思って……。
そういう所に、なんとなく、グッと来たというか……」


「………うん……」


「それで、そのうち、雪音っていう名前が離れなくなって。
さっきも、雪が降ってきたのを見て、雪音さんを思い出して、あ、お礼言わなきゃって。
一か八かで図書館に行ったんだ。雪音さんがいてくれて、本当に良かった……」


そう言って、野々山くんはふんわり微笑んだ。


その横顔をみつめて、私は心があったかくなった。




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