冬が、きた。





「そんなこと、ちっとも考えたことなかった……。私、寒がりなのに、12月生まれだからって雪なんていう名前で、名前のこと考える度にひんやりするなあとしか、思ってなかった」


「雪音さん、誕生日12月なの?」


「うん、実は昨日だったの」


「えっ、昨日!?」


野々山くんが驚いたように声を上げた。


「そうだったんだ……。1日遅いけど、お誕生日おめでとう」


「ありがとう」


ふふっと笑った所で、駅に着いた。


………このまま電車に乗って、真っ直ぐ家へ帰るのは、何となく名残惜しい気がする。


「あの、野々山くん」


「ん、なあに?」


「……えっと………」


どうしよう。
こんなに話したのは、今日が初めてなのに。


………もっと、話がしたいなんて言ったら、引かれちゃうのかな。


「ううん……なんでもない……」


ああ、私のばか。


とっさに勇気が出なかったことを激しく後悔。




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