冬が、きた。
そこから、私と慎くんが付き合うようになるまでに、時間はそれほどかからなかった。
今では慎くんの部屋の合鍵をもらっているので、慎くんが部活で帰りが遅い時は部屋に上がって、ご飯を作って待っていることも多い。
「ああ美味しかった。ごちそうさまでした」
慎くんは、うどんを食べ終わり、食器を台所に持っていって、帰ってくるや否や、カバンから分厚い冊子を取り出して、目を通し始めた。
ちらっと覗くと、細かい音符がびっしり。
………スコアだ。
その曲の、全部の楽器の音符が載っていて、どの楽器がどんなメロディを吹いているかが、それを見ればすぐにわかる。
慎くんは、たまに鉛筆でちょこちょこと書き込みをしながら、そのスコアに丁寧に目を通していく。
ここ2週間は、ずっとこんな調子だ。
今は、毎年行われる吹奏楽部のクリスマスコンサートの、約一ヶ月前。
平日休日関係なく、練習がみっちり詰まっているらしく、慎くんの帰りはいつも遅い。
……でも、去年のコンサート前は今年ほど帰りも遅くなかったし、毎晩毎晩、こんなに真剣にスコアを見てるようなことも、無かった気がするなあ………。