冬が、きた。
開演を知らせる、ブザーが鳴った。
客席の照明が落とされて、緞帳がゆっくりと上がっていく。
………慎くん。
慎くんの横顔を思わず見つめる。
慎くんは、指揮者がら目を離さない。
そして、指揮者がタクトを振り上げた。
打楽器の強烈なクレッシェンドに乗せて、金管楽器の力強い音が前奏を奏でる。
それに木管楽器の細かい連符が、華やかさを加える。
…………始まった。
すうっと、演奏に引き込まれていく。
そして、第1部の最後の曲が始まる前。
指揮者は客席に礼をして、ステージから出ていった。
「…………?」
あれ、どうしたんだろう。
すると、演奏者の中から男の人が歩いてきて、指揮台に乗った。
…………えっ?
あれは………。
「慎くん………………?」
慎くんは微笑みながら、客席に礼をし、バンドに向き直って、タクトを手に取った。
曲が始まる。
木管楽器が繊細なメロディを奏でていく。