冬が、きた。





慎くんが、なんで、指揮を……。


驚きながらも、私は慎くんの、毎日スコアを読み込んでいた姿を思い出した。


……慎くん、指揮するために、あんなに頑張ってたんだ。


きっと、私を驚かせるために、黙ってたんだ………。


慎くんの後ろ姿を、じっと見つめる。


…………すごい。


いつもの穏やかな慎くんからは想像も出来ないくらい、のびのびと手を動かして、曲の激しい場所では力強く腕を振っている。


いっぱい、練習したんだろう。


去年よりも、ずっとずっと長い時間、学校に残って、練習していたんだ。


そして迎える、感動的なコーダ部分。


今まで出てきたメロディが、発展して、重なって。


壮大なフィナーレへ。


慎くんが最後の一拍を振り切り、ホール内に音が響き渡る。


その最後の響きが、ゆっくりと消えたのを聞き、慎くんは指揮台から降りて、客席に深く礼をした。


お客さんは皆、惜しみない拍手をした。


私もひたすら、拍手をし続けた。


………顔を上げた慎くんが、私を見て、笑ったような気がした。




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