お腹が空きました。


「駄目だ。」


そう無情に言い放ちながら杉崎は冷蔵庫の扉をパタンと閉じた。

「⁈」

ガーンと紗耶は肩を落とす。


落胆する紗耶を横目で見ながらクツクツと笑って杉崎は早々と玄関へ歩き始めた。


「ほら、行くぞ。」


妙に楽しそうな杉崎の背中を渋々追いかけ、紗耶は後ろ髪を引かれながらも明日また食べられるであろう甘いお菓子に心の中で別れをつげた。









「室内はどこに住んでんだ?」

運転席から杉崎が紗耶に投げ掛ける。

「あ、酒井町です。」

「ふーん。近いんだな。」

「そうなんですよ。大学卒業してから初の一人暮らしです。あそこら辺家賃安いし。」

紗耶は杉崎を見上げながら世間話に興じた。

ドライヤーをかけずに出て来た杉崎の髪がまだ濡れている。

いつもビシッと決めた前髪が毛先だけ少しくるんっとなっているのを発見して、紗耶は声に出さずクスリと笑った。



無防備な狼さんは、ちょっと可愛い。




「右、左、どっちだ?」

「え?」


< 103 / 324 >

この作品をシェア

pagetop