お腹が空きました。
外れだよ、と口元を持ち上げながら杉崎は作業を進める。
生地作りにとりかかった杉崎を目で追いながら紗耶は頬杖を付き、ニコニコ微笑んだ。
ケーキを作っている杉崎の姿勢は美しい。
表情もどこか楽しげで、それを見ていると紗耶も自然と嬉しくなるのだ。
シャカシャカと一定のリズムで刻まれる音。
部屋中に漂う甘い香り。
オーブンの振動。
…。
…そういえば、やけ酒でもしようと思っていたあの日も、甘いケーキに救われたんだっけな。
紗耶はまだ一ヶ月程しかたっていないのに、まるで遠い昔でも思い出すようにふふふと笑った。
「ん、どうした?」
「いえいえ、なんでもないですよ。」