お腹が空きました。


がしっと腕を掴まれ紗耶はぴたりと止まる。

「だって聞いてないもん-。」

「今から!今から説明するって!!」

珍しく下手に出る由美に紗耶は困った顔をして彼女に向き直った。





…話を聞くと、どうやら彼女の知り合いがこの企画の実行委員をしているらしく、事前申込みの時点で余りにも女性参加者が少なかったため、協力をあおがれたらしい。


「…でもなー…。」

街コン。そんなものに今まで参加した事がないからいまいち勝手が分からない。

渋る紗耶に由美は手を合わせる。

「お願いだって。あんた彼氏とこの間別れたんでしょ?」

「やー、そうなんだけど、だからこそそんな気分ではないというかなんというか…。」

「街コンだから、そんなガッツリ合コンって感じではないんだって!気軽に気軽に!…え、それとも好きな人とか出来たの?」

目を大きく見開く由美に紗耶は大げさに首を振った。

「いいいいいいないよ…っ!!」


一瞬甘いケーキが思い浮かんだなんて言えるはずもなく。

ブワッと2℃ほど体温が上がる。

ないないないない。

ないって。

“好きにしていい。”

「…。」

ふと遠い所であっけなく広がるような言葉を思い出し、紗耶は上げた体温を一気に元に戻ってしまった。

ふるふるっ

由美にはばれないようにこっそりと首を振って頭の中のもの全部追い出す。


じゃあ四の五の言わず付いてきなさい!と最後はいつもの由美に戻り、引きずられるように紗耶は受付へと足を進めるのであった。





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