お腹が空きました。
◆
「むふふふふ…っ」
「なんだよ気持ち悪いな。」
杉崎はハンドルを握りながら助手席をチラリと見る。
いつもの、会社から少し離れた路地で拾い上げてから紗耶はこの調子で。
杉崎は怪訝な顔をしながら赤信号でブレーキを踏んだ。
「なんでもないですよーん。」
「…まぁ、機嫌が良い事だけは分かったけどな。」
ニヤニヤニヤニヤし続ける紗耶に、杉崎ははぁとため息をつきながらも困ったように笑った。
「そういえばさ、お前土日曜日何してんだ?」
青に変わった信号を見つめ、アクセルを踏みながら杉崎が訊ねる。
「日曜ですか?そーですね…、」
少し前までは、ここぞとばかりに財布と相談しながら食べ歩きをしていたが、最近は少々状況が変わってきている。
だいたい金曜日に[今日作るぞ。]メールが届き、杉崎スイーツが我が冷蔵庫にあるという幸せを噛み締め、ホクホクしながら土日を過ごす、というのが最近の生活。
紗耶は杉崎のケーキをご褒美として過ごしていた。
部屋の掃除を頑張ったら一口パクッ。
洗濯頑張ったら一口パクッ。
化粧がいつもより上手くできたらパクッ。
いつもより電気代安く抑えれたらパクッ。
そんな具合に杉崎スイーツはとっても役にたっている。
気を抜いたらぐうたらしてしまう自分に喝と潤いをくれるスイーツのおかげで、有意義な日曜日を過ごさせてもらっていた。
「んー…やっぱり杉崎さん様々ですね。」
「…お前いつも思うけど脳回路の構造どうなってんだ?」