お腹が空きました。





「むふふふふ…っ」


「なんだよ気持ち悪いな。」


杉崎はハンドルを握りながら助手席をチラリと見る。

いつもの、会社から少し離れた路地で拾い上げてから紗耶はこの調子で。

杉崎は怪訝な顔をしながら赤信号でブレーキを踏んだ。

「なんでもないですよーん。」

「…まぁ、機嫌が良い事だけは分かったけどな。」

ニヤニヤニヤニヤし続ける紗耶に、杉崎ははぁとため息をつきながらも困ったように笑った。

「そういえばさ、お前土日曜日何してんだ?」

青に変わった信号を見つめ、アクセルを踏みながら杉崎が訊ねる。

「日曜ですか?そーですね…、」

少し前までは、ここぞとばかりに財布と相談しながら食べ歩きをしていたが、最近は少々状況が変わってきている。

だいたい金曜日に[今日作るぞ。]メールが届き、杉崎スイーツが我が冷蔵庫にあるという幸せを噛み締め、ホクホクしながら土日を過ごす、というのが最近の生活。

紗耶は杉崎のケーキをご褒美として過ごしていた。

部屋の掃除を頑張ったら一口パクッ。


洗濯頑張ったら一口パクッ。

化粧がいつもより上手くできたらパクッ。
いつもより電気代安く抑えれたらパクッ。

そんな具合に杉崎スイーツはとっても役にたっている。

気を抜いたらぐうたらしてしまう自分に喝と潤いをくれるスイーツのおかげで、有意義な日曜日を過ごさせてもらっていた。



「んー…やっぱり杉崎さん様々ですね。」


「…お前いつも思うけど脳回路の構造どうなってんだ?」




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