お腹が空きました。

ん?と首を傾げる紗耶に、杉崎はメレンゲの角の具合を確認しながら言った。


「メレンゲを作る作業は案外難しい。ちょっとの水分ちょっとの油でたちまち泡立たなくなる。姉貴の旦那もああ見えて職人肌だからな、見た目に反して時々偏屈って事だ。…まぁ、だからオヤジも店任せる気になったんだろうけど。」


「杉崎さんのお父さんって、今海外でしたっけ。」

杉崎がお菓子を作る間、紗耶は色んな取り止めの無い話をしてきたが、杉崎の家族の話は久しぶりかもしれない。


「どんな人なんですか?杉崎さんのお父さんって。」


杉崎はケーキの型を整えながら、ぐ…っ、と複雑そうな顔をした。

「?」

「オヤジはそうだな…大らかな割には、すんごい自信家だったな。」



杉崎はヘラでボウルを小気味良く混ぜながら昔を思い出すように唸った。




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