お腹が空きました。
全て混ざった生地を型に流し入れながら杉崎は続ける。
「結構無茶な依頼来ても、やると決めたら笑顔で本当にやってのける人だった。笑い声がさ、デカイんだ。図体もデカイけど。」
温めてあったオーブンにゆっくり入れてボタンを押す杉崎を見つめながら紗耶は、ほぅ、と興味深げに相づちを打つ。
「へー、じゃあそのお父さんに色んなお菓子の作り方教わったんですね。」
「いや、」
道具を片付けながら杉崎が淡々とつげた。
「オヤジには一切教わってない。そういう事する人じゃなかったしな。それに…俺昔はケーキが嫌いで仕方なかったから。」
嫌い?
杉崎さんが?
紗耶は目を丸くして道具を磨く杉崎を見た。
そんな紗耶を見て杉崎は気まずそうにブスッと呟く。
「…なんだよ。」
「いや、そんなふうにはみえないなって思って。」
ふぅ…とため息をつき、杉崎はガラスコップに冷蔵庫からだした麦茶を注いで紗耶に渡した。
「あ、ありがとうございます。」
「毎日毎日甘ったるい匂い。」
「え?」
両手を添えてコップに口を付けながら紗耶は上を見上げた。