お腹が空きました。





「あ、杉崎さん見てください!爬虫類コーナーもありますよ!」


杉崎に買って貰ったチーズ入りたこ焼きを頬張りながら、すっかり機嫌の直った紗耶は指を刺しながら走る。


「おー、怖い顔ー。でもあんまり動かないですねぇ。」

「ゆっくり動かないと獲物が逃げるとかだろ。…お前、こういうの平気なのか?」

ガラスを覗き込む紗耶の隣に立ち、杉崎は腰に片手を当ててそんな紗耶を見る。

「ケースに入ってる分には。」

「そういうもんなのか?」

「そういうもんです。」

感心したように一つ一つガラスの向こうを真剣に見つめて行く紗耶の後ろを杉崎がぶらぶらついていく。


「あ、ワニ。やっぱりあんまり動かないなぁ。」

水位が高く設定された水槽内には、水に浮かんだワニがいて。

水面下の力の抜けた体がこちらから丸見えで、なんとも間抜けな絵面だった。

「…力の抜き方が、休日のお父さんみたいですね。」

「そうだな。」

「本当にこんなのが、人襲ったりするんですかねぇ。」

ぼんやりガラスに手を付けながら紗耶は呟く。

怖い顔して、尖った歯が並んでいるけれど、こんなのんびりしているから想像がつかない。





「襲ったりするんだよ。甘くみてると、その内お前、喰われるぞ。」





隣から降って来る杉崎の声に、紗耶は思わず鋭い顔をした狼を見上げた。



「…? なんだ?」

「いえ、」


パッと視線をそらしながら紗耶は次のスペースに歩き出す。



“甘くみてると、その内お前、



喰われるぞ”





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