お腹が空きました。

「あ、変な花ー。」

紗耶は敷地の片隅に咲く、白くて花弁が綿あめみたいに細かくふわふわしている変わった花を見つけた。

「綺麗なのか、へんてこりんなのか紙一重な花ですねー。」

「カラスウリだ。本当、蜘蛛の巣みたいだよな。」

カラスウリ?

紗耶は隣に立つ杉崎を不思議そうに見上げた。

「…なんだよ。俺が知ってたら悪いか。」

「そんなことないですけど、意外ですね。」

「普通に有名な花だろうが。夏の夜にしか咲かない変な形の花。」

「へー夜にしか…。」

紗耶は感心しながら眺める。

線香花火にも似てるし、やっぱり綺麗かも。


「この花の標的は蜂や蝶じゃなくてだな。…スズメガ。」

「スズメ…。」

「デッカい蛾。」

「…変わった趣味の花ですね。」


紗耶はドン!とスズメぐらいある大きな蛾を想像した。

だからこの繊細そうな花は夜に咲くのかと納得しながら紗耶は頷く。

「ま、お互い様だな。」

「?花と蛾ですか?」

「俺達。」

「…あの、ちなみにどっちが花でどっちが蛾ですか。」


さぁな、と笑いながら杉崎は次のエリアに足を運ぶ。


「どっちが蛾なんですかーっ!」





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