お腹が空きました。


なんだか妙に空気感の合う彼女と一緒に店内を回る。

「彼氏さんはどんなものがお好きですか?趣味とか。食べ物とか。」

どちらもスイーツです。とは杉崎の怒りの顔が浮かび、なんとなく言えず。


「んー、あ。お酒!杉崎さんお酒好きです。」

「わーっ名字で呼ばれてるんですね。なんだか素敵。」


え?と首を傾げて紗耶は考える。

名字…。

そういえば、私、




杉崎さんの下の名前、知らない。






「お酒置いてますよー!こちらです。」


名前、名前、ともやもや考えながら、紗耶は店員の後を付いて行く。


案内された壁際の棚に並ぶカラフルで趣のある瓶に、紗耶はまたコロリと悩みを忘れ、目をキラキラさせながら心を踊らせた。


「お花のお酒!わーっこんなのあるんですね!」

「どれもオススメですよー。オーソドックスなのから花崗町オリジナル商品も取り揃えてます。」

紗耶は棚の端から端までキョロキョロしながら尋ねる。

「どんな味がするんですか?想像出来ない!」

「リキュール系が多いので甘いですよ。味よりも香りに特徴があるものが多いですね。えへへ、なんせ花なので。でも味も保証します!香りの見本もありますよー。」




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