お腹が空きました。
どれもこれも素敵な香りで紗耶がうんうん悩んでいると、素敵な笑顔で店員が提案した。
「あの、花言葉で選ぶっていうのもありますよ。」
花言葉。
へー、と紗耶は店員に尋ねる。
「ローズリキュールの薔薇は『愛』。
サクラは『優れた美人』。
あ、このペチュニアなんかもイイですよ。『あなたといると、心が休まる。』」
あなたといると、心が休まる…。
可愛らしい薄紫の瓶を紗耶は見つめる。
「あの、これ頂きます。」
優しく手にとりながら、紗耶は柔らかく微笑んだ。
…
華やかに包装してもらい、会計をしていると、どこからともなくヌンッと杉崎が姿を表す。
「あれ、杉崎さん。」
「なんか買ったのか?」
秘密です、とニンマリ笑う紗耶に、怪訝な顔をして杉崎は手に下げていた袋を突き出した。
レシートとお釣りを貰いながら紗耶は首を傾げる。
「やる。」
「え、」
花を手に持っているという状況にもう耐えられないのか、杉崎はそれを強引に紗耶に渡すと、出口に向かって歩き出した。
呆然と紗耶が袋の中を覗いてみると、可愛く包装された黄色い花の植木鉢があり。
その小さくて平凡な、でも可愛らしい花に紗耶が視線を送っていると、レジの向こうからヒョコッと先ほどの店員さんが顔を出し、嬉しそうな顔をした。
「メランポジウムですね。
花言葉は『あなたは可愛い』。
わぁー…いいなぁー。」
え、、
わ、
わー…っ
紗耶は胸の辺りでギュッと手を握り、震える心臓を抑える。
良くしてくれた店員さんにお礼を言い、
紗耶は杉崎の後ろ姿を、
風をきるように追いかけた。