お腹が空きました。
「ぶくくくくっ」
隣で紗耶が両手で顔を押えて背中を丸める。
杉崎のいえの駐車場に入り、杉崎は大きくハンドルを切った。
不自然な無表情を貫き、平静を装う杉崎が可笑しくて紗耶は涙をぬぐいながら尋ねる。
「あ、そういえば…。」
「?」
「杉崎さんの、下の名ま…」
bbbbbbbbbb…
ん?
突如鳴り始めた自分の携帯に、紗耶はバックの中を覗いてそっととりだした。
「……。」
「なんだ?出ないのか?」
由美と同じ質問をする杉崎に、紗耶は簡潔に答える。
「何回か掛って来てるんですけど登録してない番号なんで…。」
「ああ、出れば?もし変なのだったら変わってやる。」
キュッと止められた車と共に、紗耶は軽くうなずいて少し緊張しながら通信画面を押した。
「…もしもし。」
『もしもし、……紗耶?』